先日、岡田悠さんの「0メートルの旅 日常を引き剝がす16の物語」という旅のエッセイ本を読みました。めちゃめちゃ面白かったので今回はその感想を紹介しようと思います。
「0メートルの旅って何?」
本書を最初に見つけたときに思った感想です。
旅ってどこかに出掛けるから旅なんでしょ?0メートルじゃ旅じゃなくね?
本書のタイトルを見たときにそんな疑問が沸き、興味が沸きました。
ネットでレビューを見てより興味が沸いたので購入しました。
本書を読んだ感想を一言で表現すると、「考え方1つで、何気ない日常がとんでもない大冒険=旅になる」ということです。
本記事をご覧になられた方には是非、本書を手に取ってほしいのですが、そのために本書の魅力を微力ですがお伝えしたいと思います。
著者のご紹介
まず、著者である岡田悠さんについて簡単にご紹介しますね。
岡田悠さんは会社員の傍ら旅のエッセイを執筆している方でして、この方の旅エッセイの面白さは以下の記事を読むとわかります。
▶経済制裁下のイランに行ったら色々すごかった(https://note.com/hyosasa/n/n73de45cf580a)
▶「世界の火薬庫」インドとパキスタンの国境がいま最高にアツい(https://note.com/hyosasa/n/n3e42e6c63486)
上記のnoteを読んでいただくと岡田さんのエッセイの面白さがすぐにわかります。
何と言っても紡ぎだす文章が非常に面白く、読んでいると本当にその場にいるような臨場感を味わえます。
「これぞ、旅エッセイ」といった感じです。
本書の魅力を少しでもお伝えするために、僕自身が感じた本書の魅力をまとめます。
本書の構成と旅の終着点
本書は全16編から構成されており、1編ずつ日本からの距離が近くなっていきます。最終的に第16編ではタイトル通り家から0メートルの旅?が始まります。
「0メートルなのに旅と呼べるのか?」
疑問に思いますよね。
著者である岡田さんは「果たしてどこまでが本当の旅と呼べるのか?」という疑問を抱えつつ、その解に近づいていきます。
そして、16編の旅を通して、最終的に「旅とは何か?」その解に到達します。
ここでは、「旅とは何か?」の解は言わないようにします。興味がある方はぜひ手に取ってみてください。
コロナ禍に出版された旅エッセイ
本書はコロナ禍に出版された旅エッセイです。旅行に行きたくても行けない。そんな岡田さんが本書にて以下のように語っています。
かつて訪れた世界中の国境が封鎖されていく。外務省の渡航危険情報ページは10年以上チェックしているが「全世界」という文字を見る日が来ると思ってもみなかった。欧米では外出禁止令が出て、都市はロックダウンされ、人々は部屋に閉じ込められた。
世界が、切断されていく。
一変した日常は刺激的な非日常などではなく、ただ画質の劣化した日常もどきにしか見えなかった。外にすら出ない毎日はモノクロのように味気なくて、かろうじて仕事をして寝るだけの日々が続いた。家での口数も減っていって、本もネットも見なくなった。旅行記を書く気分にもなれずに、旅への興味も薄れていた。あらゆるものに鈍感になった僕は、切断されてゆく世界と同じだった。
おそらく、旅行に興味があまりない人でも「世界の分断」というものを少なからず感じたはずです。
だからこそ、岡田さんが書いた本書「0メートルの旅 日常を引き剥がす16の物語」に惹かれたのかもしれません。
そしてこんな時代だからこそ、「旅とは何か?」という命題の答えを知りたくなるんですよね。
主人公の人柄・独特な考え方に心惹かれる
まず、本書の面白さは何と言っても語り手である著者の岡田さんの人柄・独特な考え方にあります。
本書から岡田さんは「とんでもない購読力の持ち主」ということがわかります。
○裸で南極の海に飛び込む
○縁起の良いという絶滅危惧種の「青い鳥」を見るために南アフリカまで行く
○初めての海外一人旅の行き先にモロッコをチョイスする
なかなかすごいですよね。
そして考えることもぶっ飛んでいます(笑)
○近所の寿司屋で毎週貰える無料クーポンに書かれたネタを3年間Excelに記録して法則を見つける
○1週間、江戸の古地図を見て古地図にある道だけを使って生活する
〇エアロバイクで日本縦断
発想がすごいと思いませんか?
少なくとも、僕はこのような発想にはなりません(笑)
こんな感じの方なので、エピソード自体が非常に面白いです。
当然、エピソードだけでなく、文章の読みやすさと岡田さんのユーモアが爆発しているので、まるで小説のように読み進められます。
異国の文化・臨場感を感じられる旅行記
旅エッセイなので当然、異国の文化を文章を通して知ることができるわけですが、岡田さんの紡ぎだす言葉はそれを堅苦しくならず、一緒に体験しているようなそんな気分にさせてくれます。
読んでいても苦にならず、先へ先へと続きが気になるんですよね。
本書の海外編では以下の国へ旅行に行きます。
〇南極
〇南アフリカ
〇モロッコ
〇イスラエル
〇パレスチナ
〇イラン
〇ウズベキスタン
〇インド
どこもあまり馴染みがない国だと思います。
だからこそ、本書を読み、岡田さんの旅行を疑似体験することで「へ~、この国ってこんな感じなのか」というのを知ることができます。
特に、イラン編の「経済制裁下のイランでの両替の話」や「インドとパキスタンの国境の話」は非常に興味深いものがあり、日本国内にいたら絶対に触れることのない文化だな~と感じました。
これら2つのエピソードは岡田さんのnoteからも読めるので是非読んでみてください。で、もっと岡田さんの旅エッセイを読みたくなったら本書を手に取るというのもアリだと思います。
noteのリンクは本記事の著者のご紹介のところに貼っておきますね。
モロッコの少年との出会い
本書を読んで、「もっと色々な国に行きたい」そう思うようになりました。
僕にそうさせたのは、岡田さんが初めての海外ひとり旅の行き先としてモロッコを選んで旅をしたエピソードです。
そのエピソードの中で、岡田さんはバックパックを盗まれるトラブルに見舞われます。
それを紆余曲折あり、ハムザという現地の青年が助けてくれます。その青年が岡田さんとの別れ際に涙を流しながら話す言葉が非常に印象的なんです。
「僕は多分、この国から出ないまま死ぬ」
カモメが軽やかに舞う。パスポートも持たずに、するりとジブラルタル海峡を越えていく。
「だから代わりに、悠にはいろんな景色を見てほしい」
どこで生まれたかで、その人の人生が決まってしまう。
日本に生まれたということはその時点で沢山の国に旅行できることが決まっている。
それは日本に生まれ、日本で生活しているから特別感を持たないが、それは当たり前のことでない。
「沢山の国に旅行に行きたい」
青年ハムザとの会話で僕自身にも大きな影響を与えてくれました。
まとめ:「0メートルの旅 日常を引き剥がす16の物語」感想
本書は旅行がしにくい今だからこそ、読む価値があると感じました。
旅行ができない今だからこそ、「旅とは何か?」という問いの答えが知りたくなります。
1編1編は非常に短く読みやすいです。興味を持ってっくださった方は是非本書をチェックしてみてください。